プロボクサーの減量~水抜きのやり方~
前回の投稿では、減量の設定方法や徐脂肪期について書いていきましたが、(まだ読んでいない方はこちらから↓)
今回の記事では、その後に行う水抜きについて話していきます。
水抜きとは
まず水抜きとは体内の水分を一時的に抜くことで体重を軽くし、計量をクリアするというテクニックです。
メリットはこちらに書いてありますが、除脂肪体重よりも一時的に体重を軽くすることが可能です。
体内の水分を抜くので体は脱水状態になります。
そのため、なるべく水分が抜けている時間が短い方が体の負担が少ないので、理想を言うと水抜き後そのまま秤に乗れるのが理想的です。
なので可能であれば計量当日に水抜きを行い、計量会場へ向かうというのが現実的に理想形かと思います。それだと不安がある方は前日の夜から始めてみましょう。
このように直前での急速減量を行うため、多少失敗のリスクが生まれます。
昔ながらの、食事量や水分量を徐々に落とすような減量を行っている選手がこの方法をそのまま使うと間違いなく失敗するので辞めておきましょう。
次からその失敗をしないために行う方法を書いていきます。
ウォーターローディング
一時的に水分の排出を高める方法のひとつがウォーターローディングです。
簡単に言うと大量に水を飲みます。
水分を制限して体液が濃くなると、バソプレシンという体内ホルモンがより働くようになり、水の再吸収を増加させてしまいます。
それを大量に水を飲むことによって体液を薄めて、一時的にバソプレシンの働きを弱めることが目的です。
いつからどのくらいの期間どのくらいの量を飲むのかというと、ウォーターローディングの開始は試合5日前から3日間続けて行います。
なので、例えば10日に試合だとしたら5日、6日、7日がウォーターローディングの期間です。
量としては体重×100mlなので、体重60kgであれば、6ℓですね。
計量前日には体重×15mlにまで水分摂取を減らします。
これも60kgを例だと、900mlです。
もうここで飲まなくていい理由としては、ラットでの研究ですが、3日間のウォーターローディングを行った結果、2~3日水分の排出が高まったデータがある為です。
昔ながらの減量法だと試合が近づくにつれ、徐々に水分を減らしていくのが主法なのでそれに比べると、試合前に大量に水を飲むことが抵抗ある選手もいると思いますが、これを行うことでより失敗のリスクが減らせるので頑張ってみましょう。
塩分
同じように体内の水分を排出しやすくする為に大事なのが塩分の制限。所謂塩分カットです。
塩分は体内でナトリウムとして、細胞外液という血液や細胞間質に多く、ナトリウムが多くなり細胞外液が濃くなれば体内の恒常性を保つために水分を引き込み濃さを調整します。
反対にナトリウムが少なくなれば濃度を調整する為に水分を排出する為、塩分摂取を控えると体水分量が少なくなります。
ただ腎臓でナトリウムの再吸収を行うアルドステロンの働きがあるため、塩分カットの前日に塩分量を反対に増やすことによって、アルドステロンの働きが弱まりナトリウムの排出がよりスムーズになります。
塩分カットを行うタイミングとしては、ウォーターローディングが終わった計量前日のみで結構です。
なので
計量2日前→塩分ローディング
計量前日→塩分カット
とこのようになります。
どの程度の塩分摂取をしているかというと、塩分ローディングでは+2g程度、塩分カットでは極力塩分を摂取しないよう味付けを行わずに食事をしています。
プラスで行った方がいい事としてはカリウムの摂取です。
カリウムを摂取することでナトリウムの排出が促進されます。
カリウムは果物や野菜などに多く含まれていますので、私は計量前日にドライフルーツなどを食べることが多いです。
汗出し
計量前日から水分摂取を少なくし、塩分も控えているのでこの辺りからどんどんと体重が落ち始めます。
この日、又は計量当日に最後の汗出しを行っていきます。
方法としておすすめしているのが半身浴で、理由としてはこのタイミングで長時間動いて疲労を溜めたくないのと、ここから書いていくある方法を使うことで比較的楽に行えるからです。
実際私がどのように計量当日に汗出しをするか前日にするのかを決めているのかというと、浴室にいる時間を2時間程度と決めておりそれで落とせる程度であれば当日のみで落とすといった形です。
半身浴のやり方については実際に試合前行った様子をYouTubeにアップしていますのでこちらを見るとよりわかりやすいと思います。
前述した比較的に楽に行える方法というのがここで紹介したカード切りというもので、15分程度体を温めて汗がよく出るようになったら湯船から出て汗をカードで切っていきます。
カード切りをしている間も汗がドバドバと出てくるので、それがあまり出なくなるまで切っていると自然と湯船から出ている時間が長くなるため体感的にとても楽になります。
私は大体2時間で1.5kg程は落ちるので、それを計量前日・当日と行い、残りは排尿や代謝でリミットになります。
参考書籍
ウォーターローディングに関して、こちらの書籍を参考にしています。
他にも減量に活かせることが多く載っているのでおすすめです。
まとめ
最近では減量失敗が目立つことから水抜きが叩かれがちですが、一気に抜こうと徐々に抜こうと水抜きは水抜きです。
コンディションを考えれば間違いなく一気に落とした方がいいコンディションで仕上がります。
プロボクシングの計量ルール上、このようなやり方を行った方が相手との差を付けやすいですが、元々は前日計量は選手の安全性を守るために当日計量から変更されたと聞きます。
選手の身を守るためということであれば、今はONE Championshipで行われている尿比重や体重データの定期提出などを参考にすべきだと思います。
長々と書きましたが、このようにルールの中でより有利に戦うためにこのような方法がありますが、何よりも大事なのはまずリングに上がることです。
リングに上がれず周りをガッカリさせないように、そしてよりよいコンディションでリングに上がって勝利を勝ち取れるように、練習だけでなくコンディションに関しても意識を向けてみましょう。
私自身も当然まだ改善すべき点があるはずだと思っているので、今後も勉強を続けてこの場でも発信していきます。
最近のコメント